店舗の排煙設備の設置基準をわかりやすく解説! 建築基準法をやさしく紐解きます

店舗の排煙設備の設置基準は、店舗で万が一火災が起きた際、大量の煙を適切に屋外に逃がすことは、顧客や従業員の安全を守るために必要不可欠です。しかし、排煙設備にはどんな種類があり、どんな場所・基準で設置すべきかなど、よく分からないこともあると思います。

今回は、店舗の排煙設備の設置基準について、詳しく解説します。飲食店をはじめ、店舗設計に欠かすことができない内容ですから、よく読んで参考にしてください。

排煙設備とは?

排煙設備とは、文字どおり、屋内で発生した煙を屋外に逃がすための設備です。火災により屋内で煙が大量に発生しても、何もしなければその場にとどまったままになってしまいます。

火災における煙には有害物質が含まれており、人が吸い込むと健康被害につながるリスクがあります。そのため、建築基準法では、一定の基準を満たした場合に、所定の排煙設備を設置することを義務付けているのです。

店舗における排煙設備の主な目的

建築基準法では、排煙設備の設置目的を、「火災発生時に屋内にいる人の安全を確保し、速やかな避難を可能にすること」などとしています。

いったん火災が発生すると、完全に消火するまでずっと煙が出続ける状態になります。このとき、速やかに排煙できるかどうかで、初期避難や初期救助がスムーズに進むのです。特に、火災の発生リスクが高い飲食店では、適切に排煙設備を設置し、良好な状態に維持することが重要といえます。

排煙設備の設置条件

排気設備の設置条件は、以下を参考にしてください。

  • 防煙区画の最大床面積が500㎡以下
  • 排煙口から防煙区画までの水平距離が30m以下
  • 防煙区画を仕切る垂れ壁は、天井から50cm以上突き出す
  • 防煙用の垂れ壁は不燃素材を使用する
  • 排煙口は、天井高さが3m未満は天井から80cm以内

より詳しい条件については、店舗設計の実績が豊富にあり、排煙設備の設置に詳しい業者にアドバイスをもらうことがおすすめです。

店舗における排煙設備の主な種類

店舗における排煙設備の種類は、主に「自然排煙設備」と「機械排煙設備」に分けられます。

自然排煙設備

自然排煙設備は、煙が上へ異動する性質を利用し、天井付近に窓などの開口部を設置する方式です。屋内外の気圧差や、自然な風を利用するため、電気を使わずに済みます。

しかし、あくまでも自然に排出される方式のため、想定以上の煙が発生した場合は、うまく機能しないことがあります。たとえば、火災などで大量の煙が発生するケースでは、自然排煙だけでは不十分なこともあるでしょう。

機械排煙設備

機械排煙設備は、排煙機器を使用し、ダクトを通じて強制的に屋内の煙を屋外へ排出させる方式です。ビルの中など、物理的に自然排煙できない場合によく見られます。なお、機械排煙設備に求められる能力や条件は、以下のとおりです。

  • 1分間に120m³以上かつ防煙区画の床面積1㎡に付き1m³の空気を排出
  • 電源を使用する場合は、予備電源の用意が必要
  • 排煙口は不燃材料で制作する
  • 排煙風道は不燃材料で制作し、可燃材料から15cm以上離す

機械排煙設備は強制的に排煙するため、屋外に面していない場所や壁面でも設置できます。なお、廊下や通路の排煙設備はメンテナンスを忘れがちなので、意識して定期的に行うことが大切です。

排煙設備の設置必要な建築物

建築基準法の第126条の2において、排煙設備の設置が必要な建築物は、延べ面積が500㎡を超える特殊建築物などと指定されています。特殊建築物については、以下をご覧ください。

  • 劇場・映画館・集会場など
  • 病院・診療所・ホテル・共同住宅・寄宿舎・児童福祉施設など
  • 学校・体育館・図書館・スポーツ練習場など
  • 百貨店・展示場・バー・飲食店・店舗など

上記のように、人が多く集まる場所は、基本的に排煙設備の設置が義務付けられていると考えてよいでしょう。そのほかにも、以下のような条件を満たす場合は、排煙設備の設置が必要です。

  • 3階以上で延べ面積が500㎡を超える建築物
  • 排煙用の窓がない居室
  • 延べ面積が1,000㎡ を超え、かつ、建築物の床面積が200㎡を超える居室
  • 窓やそのほかの開口部を有しない居室

上記に当てはまらない建築物については、排煙設備の設置義務はありません。しかし、火災が発生した際に、初期消火や初期避難がスムーズに行えるよう、よく考えて店舗設計すべきです。

排煙設備は店舗のどこに設置すればよい?

店舗における排煙設備は、以下のような場所に設置する必要があります。

  • 営業フロア
  • 廊下
  • 通路

単に、営業フロアだけ設置すればよいわけではないので、注意しましょう。実際に、排煙設備を適切に設置していないために、火災発生時に甚大な被害につながることがあります。

排煙設備の設置場所周辺で気を付けるべきことは?

建築基準法において排煙設備を設置していても、以下のようなことがあると排煙性能に支障が出る可能性があります。

周辺に大量のものを置かない

排煙設備の周辺に大量のものを置いていると、うまく排煙できません。特に、店舗内にインテリアや備品を多く置いている場合は、不用品を片付けて処分し、排煙設備がきちんと役割を果たせるようにしましょう。

また、店舗内にものが多過ぎると、いざというときに避難が遅れてしまい、被害が拡大してしまうのもデメリットです、火災発生時にスムーズに排煙し、顧客や従業員の初期避難や初期救助を滞りなく行うためにも、排煙設備の周辺はできるだけスッキリ片付けておきましょう。

こまめにメンテナンスする

排煙設備は、こまめにメンテナンスしましょう。配線設備がメンテナンス不足では、本来の排煙性能が十分に発揮できないことがあります。排煙設備は、汚れなどがないクリーンな状態でこそ、正常に稼働し、十分な排煙性能が期待できるのです。

実際に、排煙設備を長年メンテナンスをせずにいると、徐々にホコリがたまっていきます。特に、飲食店の場合は、油を含んだ排気により、ベタベタとした汚れが付着するため、とても厄介です。

こうした汚れは、簡単に落とすことができず、業者による清掃が必要になり、メンテナンス費用が高く付くことがあるので、注意しましょう。

寿命を迎えたら交換する

排煙設備も、経年などにより徐々に部材が劣化するものです。部材が劣化した排煙設備は、不具合が多発し、やがて完全に故障します。煙設備の耐用年数は、一般的には設置してから20年程度です。

しかし、あくまでも目安であるため、20年に満たない場合でも、寿命を迎えることがあります。

不具合がある排煙設備をそのまま使い続けると、突然故障していざというときに役に立たないことがあります。定期的に専門業者へ点検を依頼し、寿命が近づいたと判断したら、早急に交換を行いましょう。

まとめ

排煙設備は、店舗内の煙を逃がす目的で設置されるものです。店舗において、排煙設備を適切に設置することは、建築基準法で義務付けられています。まずは、設置条件をきちんと満たしているか確認し、不備があるときは早急に対処しましょう。

なお私たちサイファーデザインでは、名古屋市を中心とする愛知県において、店舗設計を多数おまかせいただいた実績があります。店舗の排煙設備でよく分からないことがありましたら、何なりとお問い合わせください。