景観法とは?店舗デザインの観点から概要をわかりやすく解説します
景観法は景観や街並み保護のために制定された、店舗デザインにも関係する法律です。しかし、どのように関係するのか知らないという方は、少なくありません
景観法について、店舗デザインの観点からわかりやすく解説していきます。さらに、景観法に違反した場合の罰則と景観法に基づいた店舗デザインにするコツについても、ご紹介します。
景観法とは
景観法とは、都市や農村などの美しい景色や街並みを保護したり、作り出したりすることを促進する法律です。日本の美しい景色や歴史的な街並みを保護することで、住民のQOL向上や地域社会、経済を発展させることを目的として制定されました。
景観法の具体的な目的は、主に3つあります。
目的 | 詳細 | |
1 | 美しく風格のある国土を形成する | 日本の美しい風景や伝統的な街並みを保つ。
地域の個性を活かし、日本全体の風格を高める。 |
2 | 豊かな生活環境にする | 緑豊かな公園や美しい街並みは、生活環境が良く、住民の健康や幸福感向上に繋がる。 |
3 | 地域社会の活性化 | 観光客や新規住民を惹きつけ、地域や経済を活性化させる。 |
つまり、日本の美しい景観や歴史ある建造物を守りながら、地域や経済を活性化させるために制定された法律です。
景観計画区域内で制約されていること
景観計画区域内とは、景観を守りながら、より良くするための特別なルールが適用されるエリアのことです。市町村などの各自治体が「特に景観を守りたい場所」に指定されます。
景観計画区域内で建築や工作物をする場合、以下のような制約がかけられます。
1.市町村長から認定を受けなければならない
景観地区内へ建築する場合、申請書を提出し市町村長の認定を受ける必要があります。また、建築物の計画や設計を変更する場合も、再申請が必要です。(景観法 第63条1項)
2.建物の外観を制約される
政令で定められた基準に従い、条例として形態意匠や建物の高さ、壁面後退の距離など、建物の設置やデザインなどを制約されます。(景観法 第72条1項)
3.景観形成のための制約をされる
景観計画区域内では、政令が定める基準に従い、条例として景観形成に必要な制約をかけられます。そのため、条例に従った外装、外構にしなければなりません。(景観法第73条1項)景観計画区域内では、政令だけでなく条例にも従った店舗デザインにする必要があります。
景観法と店舗デザインの関係性
景観法は、店舗デザインに以下のような影響を与えます。
・外観デザインの規制
・看板や広告の制限
・届け出が必要 など
それぞれについて、詳しく解説していきます。
外観デザインの制約
景観計画区域内では、店舗の外観に使う色や素材などが制約されたり、指定されたりします。
例えば、歴史的な街並みが残る地域では、派手な色やモダンすぎるデザインは雰囲気に合わないため制約され、周辺の建物に馴染む落ち着いた店舗デザインが求められるのです。
また、建物の高さや形状も制約されやすいポイントです。特に、歴史ある建物が多い地域では、周囲の建物高さを揃えたり、伝統的な形状を取り入れたりするよう求められます。
看板や広告の制限
景観法では、店舗デザインだけでなく看板や広告にも制限が設けられます。看板のサイズや設置場所、デザインなど、地域の景観を損なわないよう配慮しなければなりません。
特に、歴史的な街並みや自然豊かな地域では、目立つネオン看板や特徴的な広告は、景観にそぐわないため、設置が制限されます。
デザインや色彩など、地域ごとに条例が設けられ、周囲との調和を重視した看板や広告が求められます。看板や広告に関する制限は、地域の美観を保ちながら、待ちの一体感や独自性を維持するために必要です。
新築や改築時の届け出が必要
景観計画区域内で新築や改築を行う場合は、事前に自治体への届け出が必須です。建物の設計図や店舗デザインを提出し、地域の景観に配慮した計画であるかを審査されます。
審査内容には、建物の高さや形状、色彩が周囲の景観に悪影響を与えないかが含まれ、審査に通らなければ、デザインの修正や変更が求められます。自治体から勧告や変更命令が出された場合は、デザイナーと相談し従うようにしましょう。届け出を怠ると、罰則の対象になるため注意が必要です。
景観法に違反した場合の罰則
景観法に違反した場合、懲役または罰金のどちらかが科せられます。
景観法 | 違反内容 | 罰則内容 |
第101条
第102条 第1項 |
・景観行政団体の長または市町村長の命令に違反した | 1年以下の懲役
50万円以下の罰金 |
第102条 | ・申請書を提出していない
・虚偽の申請書を提出した ・景観法違反の建物を工事した ・景観法違反の応急仮設建築物を存続させた |
50万円以下の罰金 |
違反内容は、上記の他にも立入調査を拒んだ場合や認定の写しを備えておかなかった場合など、多数定められています。罰則を受けないためにも、法律に基づき店舗デザインや設計、施工を進めるよう努めましょう。
景観法に基づいた店舗デザインにするポイント
景観法に基づいた店舗デザインにするには、5つのポイントを押さえておきましょう。
・地域の景観計画を確認する
・周辺の建物と雰囲気を合わせる
・建物の高さや形状に注意する
・外構デザインにも配慮する
・雰囲気を出す照明
それぞれ、詳しく解説します。
地域の景観計画を確認する
店舗デザインや外装を決める際、景観計画を確認し、地域特有のデザイン基準や制限を理解しておく必要があります。事前に景観計画を確認しておくことで、地域の歴史や文化を知り、自治体が目指す景観や地域像に合わせた店舗デザインが提案しやすくなります。
景観計画を基に、周囲の建物との調和を意識した店舗デザインを考案してみましょう。
周辺の建物と雰囲気を合わせる
近隣の建築物のデザインや色彩を観察し、共通点を見つけましょう。
例えば、和風の建物が多い地域では、木材や和瓦を使用し、落ち着いた色調を採用することで違和感なく溶け込めます。また、地域特有の伝統的な意匠や装飾を現代的にアレンジして取り入れるのもおすすめです。
店舗正面のデザインや窓の形状、屋根の様式なども、周辺と調和するよう配慮しましょう。
建物の高さや形状に注意する
多くの景観計画では、地区ごとに建物の高さ制限が設けられており、これを遵守しなければなりません。例えば、低層住宅地域では1〜2階建てまでに抑えるといった、周囲の建物と調和する店舗デザインにする必要があります。
また、建物の形状についても、周辺の建築様式に合わせることが重要です。急激な高低差や特異な形状は避け、周囲と調和する形状を選択しましょう。街並みを考慮したデザインを心がけることで、魅力的な景観づくりに貢献できます。
外構デザインにも配慮
庭や駐車場、フェンスなど、外構デザインも地域の景観に影響を与える要素です。街の雰囲気に合った外構デザインを心がけましょう。
また、地域によっては外構に植える植物が制限されていることもあるため、注意が必要です。店舗前の歩道や公開空地の整備にも配慮し、地域の人々が憩える空間づくりを心がけることで、より魅力的な景観形成に貢献できます。
雰囲気を出す照明
過度に明るい照明や点滅する派手な照明は避け、周囲の明るさと調和した柔らかな光を心がけましょう。例えば、歴史的な街並みでは暖かみのある電球色がおすすめです。また、建物の正面部分や特徴的な部分をライトアップすることで、夜間ならではの景観を演出できます。
まとめ
景観法とはどんな法律なのか、店舗デザインとの関係について解説しました。
日本の歴史的な景観を守り、地域や経済を発展させることは、店舗を運営する者にとっても関係のあることです。店舗開業や改装を成功させるためにも、景観法に基づいた店舗デザインを考案しましょう。
設計施工会社のサイファーでは、店舗デザインや空間デザインを通して、お客様の課題を解決するお手伝いをしております。店舗開業や店舗改装でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。