飲食店開業に必要な開業届とは?法人?個人事業主?それぞれに必要な届け出をわかりやすく解説します

飲食店開業に必要な開業届

飲食店を開業する際は、開業届を提出しなければいけません。しかし、法人と個人事業主では、提出に必要な届け出は異なります。

飲食店を開業するときに必要な届け出にはどんなものがあるのか、法人と個人事業主に分けて説明していきます。

これから飲食店を開業する方は、ぜひ参考にしてみてください。

法人として飲食店を開業する場合の必要な届け出

法人として飲食店を開業する

法人を設立して飲食店を開業する場合、いわゆる開業届は必要ありません。その代わりに、法人を設立する際の必要書類があります。

まずは、法人を設立する際に必要な届け出を説明していきます。

法人設立届出書の提出

飲食店を開業するには、先に法人設立届出書を提出する必要があります。

法人設立届出書とは法人を設立した際に届け出る書類です。法人設立届出書と一緒に、定款の写しや設立時貸借対照表、株主名簿も添付します。

法人設立届出書は管轄税務署へ提出しますが、都道府県税事務所と市区町村村役場にも提出しなければいけません。

なお、各管轄へ提出する期限は以下のとおりです。

提出先 提出期限
税務署 設立後2ヶ月以内
都道府県税事務所 設立後1ヶ月以内
市区町村村役場

 

ただし、東京23区に限っては都税事務所の提出のみで、区役所への提出は必要ありません。

青色申告承認申請書の提出

青色申告するためには、管轄税務署へ青色申告承認申請書の提出も必要です。

青色申告とは、決められた帳簿に記帳し、記録に基づいて正しく確定申告を行う制度のこと。最大で最大65万円(もしくは55万円)の控除を受けられます。

最大65万円(もしくは55万円)の控除を受けるために必要なのが青色申告承認申請書です。提出期限は法人設立後3ヶ月以内、もしくは第一期終了日のいずれか早い日となります。

青色申告承認申請書を提出しないと自動的に白色申告へ切り替わってしまいます。白色申告になると、基本的に税制上の優遇措置は受けられません。

給与支払事務所等の開設届出書の提出

従業員を雇う場合は、給与支払事務所等の開設届出書の提出も必要です。

これは、従業員の給与支払いに関する書類のことで、管轄税務署へ従業員を雇用してから1ヶ月以内の提出が求められています。

個人事業主として飲食店を開業する場合の必要な届け出

個人事業主として飲食店を開業する

個人事業主として飲食店を開業する場合の必要な届け出は、法人とは異なるものがあります。ここからは、個人事業主で必要な届け出について紹介していきます。

個人事業の開業・廃業等届出の提出

個人事業主として飲食店を開業する場合は、個人事業の開業・廃業等届出が必要です。個人事業の開業・廃業等届出は、法人の法人設立届出書に該当するものです。

提出先は管轄税務署となっており、事業開始から1ヶ月以内に提出しなければいけません。

なお個人事業の開業・廃業等届出は、国税の所得税に関わる書類です。

個人事業税の事業開始等申告書の提出

個人事業税の事業開始等申告書も、先の個人事業の開業・廃業等届出と同じ役割のある書類です。

個人事業の開業・廃業等届出は国へ事業を開始したことを知らせる届け出ですが、個人事業税の事業開始等申告書は都道府県税事務所へ提出しなければいけません。

個人事業税の事業開始等申告書の提出により、地方税の個人事業税が課せられます。

なお、個人事業税の事業開始等申告書に関しては、提出期限を設けていません。

所得税の青色申告承認申請書の提出

個人事業の開業・廃業等届出を提出すると、青色申告が行えます。

そのため、個人事業の開業・廃業等届出とセットで青色申告承認申請書も提出しておきましょう。

青色申告に関しての概要は、法人の項目で述べたとおりです。提出期限は法人とは異なり、開業開始から2ヶ月以内で管轄税務署へ提出します。

万が一、青色申告承認申請書の提出が期限に間に合わなかった場合は、青色申告の開始が1年送れてしまうので注意しましょう。

開業届を提出するメリット・デメリット

開業届を提出するメリット・デメリット

個人事業主の場合、事業を新しく始める際は開業届を提出しなければいけません。

これは所得税法第229条で定義されており、義務付けられています。また、開業届の提出は開業から1ヶ月以内と定められています。

義務付けられている開業届の提出ですが、実はメリットとデメリットがあるんです。

開業届から受けるメリットとデメリットにはどんなものがあるのか、それぞれ解説していきます。

メリット

開業届を提出するメリットには、青色申告制度を活用できることです。

青色申告制度は、開業届と一緒に青色申告承認申請書を提出すると、確定申告の際、最大65万円の控除を受けられます。

また、万が一赤字になった年があった場合でも、最長3年間の損失申告が繰り返し可能です。

ほかにも屋号を付けられるのも大きなメリットと言えるでしょう。屋号があれば、事業専用の銀行口座を作ることもできます。

意外に知られていないのが、個人事業主にはさまざまな支援制度があることです。開業届を提出していなければ、支援制度を受けることはできません。

デメリット

開業届を提出するデメリットといえば、失業保険を受給できなくなることです。

というのも、失業保険を受給できるのは「就職活動を容易にすることを目的としている」ことなので、開業届を提出した時点で就職する意思はないとみなされます。

万が一、会社を退職し失業保険の受給を検討されている方は、十分注意してください。

飲食店開業に欠かせないその他の届け出【法人・個人共通】

上記までは、飲食店開業に関わる必要な届け出を法人と個人事業主で説明をしました。

飲食店開業には、それ以外にも届け出が義務付けられている書類がたくさんあります。飲食店の業態により必要有無は変わりますが、以下に代表的な届け出を挙げてみました。

届け出 提出先 提出期限 備考
食品営業許可 保健所 開業の2週間前まで ・食品衛生法に基づいた許可のこと

・全ての事業形態で必要

・店舗が完成後に申請が必要

防火管理者選任届 消防署 営業開始まで ・店内収容人数が30名を超える場合に必要
防火対象設備使用開始届 消防署 営業開始の7日前まで ・火災予防や火災発生時の被害軽減へ役立てるために必要
火を使用する設備の設置届け 消防署 営業開始の7日前まで ・一定の基準を超えるような設備を使用する場合

・熱風炉や厨房などが対象

深夜における酒類提供飲食営業開始届出書 警察署 営業開始の10日前まで ・午前0時以降、酒を提供する場合
風俗営業許可 警察署 申請が下りるまで約55日ほどかかる ・客の接待をし、遊興または飲食をさせるような営業の場合

・条件が複雑のため警察署に相談が望ましい

 

どの業態でも必ず必要なのが食品営業許可です。食品営業許可の届け出は、店舗が完成してからでないと受け付けてもらえません。そのため、開業日から逆算して動くようにしましょう。

合わせて必須の届け出は防火対象設備使用開始届です。万が一の火災に備えて提出が義務付けられています。

残りの届け出は該当する業態に応じて提出するようにしてください。

飲食店開業を無申告で行った場合は?

飲食店開業を無申告で行った場合

無申告で飲食店を開業すると、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられます。場合によっては、営業停止処分になることもあるでしょう。

さらに、延滞税や無申告加算税などの申告漏れによるペナルティも考えられます。

ただし、飲食店を開業して売上が思わしくなかった場合は、例外措置があります。

それは、事業所得が48万円以下の場合、確定申告の必要はないということ。その理由はもともと、所得税の基礎控除が48万円なので、課税対象がないからです。

ただし、あくまでも確定申告の話です。必要な届け出は、期限内に提出するようにしてください。

まとめ

飲食店を開業した際の必要な届け出

正しく税金を納めるためにも、飲食店を開業した際は必要な届け出をしましょう。

法人と個人事業主とでは必要な届け出が異なりますが、多くの届け出は共通しています。意外にも提出する届け出が多いため、事前に準備しておくといいでしょう。

とくに飲食店は業態によって必要な届け出が異なります。また提出先もさまざまのため、効率よく動けるようにしておいてください。

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