店舗の防火区画とは?設置基準をわかりやすく解説します
店舗の内装設計を行う際、防火区画の設置基準を正しく理解していることが大切です。店舗の面積などで一定の条件を満たす場合は、建築基準法で決められた防火区画を考えて設計する必要があります。
しかし、防火区画とは何か、どんなポイントを押さえて設計すべきかなど、よく分からないこともあると思います。今回は、店舗の防火区画の設置基準について詳しくご紹介しますので、ぜひお役立てください。
防火区画とは?
防火区画とは、建物の内部で火災が発生したことを想定し、延焼を最小限にとどめることを目的として設置される区画のことです。
建物の内部で火災が発生しても、発生場所と離れた位置にいる人が、必ずしもすぐに気付いて避難できるとは限りません。そこで、防火区画により火災の延焼を抑えることが、被害の拡大を防ぐために必要不可欠といえます。
防火区画を作る方法は?
防火区画を作るには、以下のような方法があります。
- 耐火構造もしくは準耐火構造の壁や床を採用する
- 防火戸・防火シャッター・防火スクリーンなどの防火設備もしくは特定防火設備を設置する
なお、防火設備は20分以上、特定防火設備は1時間以上の耐火性能が必要です。
防火区画の主な種類
防火区画には、「面積区画」「高層区画」「竪穴区画」「異種用途区画」の4つの種類があります。それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
面積区画とは?
面積区画とは、一定の面積ごとに設置する防火区画のことです。主に、同一フロア(水平方向)の火災拡大を防ぐことが目的で、床面積を何㎡以内ごとに区画するか決めています。
面積 | 区画が必要になる建築物 |
1500㎡以下 | 主要構造部を耐火構造とした建築物もしくは準耐火建築物(任意準耐火) |
1000㎡以下 | 耐火建築物(1時間以上を除く) 準耐火建築物 |
500㎡以下 | 準耐火建築物(1時間以上) 準耐火建築物 |
なお、消火設備(スプリンクラー・泡消火設備などで自動式のもの)を設置している場合、設置部分の床面積の1/2を除外できます。
高層区画とは?
高層区画とは、建物の11階以上の高層部分に適用される防火区画のことです。具体的には、以下をご覧ください。
面積 | 条件 |
500㎡ごと | 壁および天井の室内に面する部分を不燃材料仕上げており、かつ、下地にも不燃材料を用いているもの |
200㎡ごと | 壁および天井の室内に面する部分を準不燃材料仕上げており、かつ、下地にも準不燃材料を用いているもの |
100㎡ごと | 建物の11階以上の部分で、各階の床面積の合計が100㎡を超えるもの |
竪穴区画とは?
竪穴区画とは、建物の垂直動線およびパイプスペースを区画することです。ここでの垂直動線とは、エレベーターや階段・シャフト・ダクトなどの垂直方向に移動するための場所を意味します。また、パイプスペースとは、上階と下階の設備配管を接続するスペースです。
竪穴区画をきちんと防火対策することで、下階で発生した火災による煙や炎を上階に向かわせないようにする必要があります。なお、竪穴区画が適用されるのは、主要構造部が準耐火構造で、地階もしくは3 階以上に居室のある建物です。たとえば、店舗付き住宅などが該当します。
異種用途区画とは?
異種用途区画とは、「特殊用途建築物」と「そのほかの建築物」に設置が必要な防火区画です。ここでの特殊用途建築物の一つが、店舗です。たとえば、飲食店とオフィス、飲食店とフリースペースといった異なる用途の区画が隣り合っている場合は、防火区画を設置する必要があります。
ただし、以下のような場合は、異種用途区画の適用除外となります。
- 床部分は必ず区画する(階数が異なる部分は区画が必要)
- 隣接する部分が病院・診療所
防火区画を設置しなくてよいケースは?
劇場や映画館など用途上やむを得ない場合
劇場や映画館など、用途上やむを得ないと判断された場合は、その用途の部分において面積区画の設置が免除されます。防火区画を設置すると、本来の用途に支障が出るからです。
ただし、面積区画の免除は、あくまでもその用途の部分のみになります。たとえば、劇場に併設されたレストランや喫茶店などには当てはまらないので注意しましょう。
階段やエレベーター・避難経路で一定の条件を満たす場合
階段やエレベーター・避難経路で一定の条件を満たす場合は、面積区画および高層階区画が免除されることがあります。こうした場所では、防火区画を設置することで、非難時に支障がでることが予想されるからです。
ただし、面積区画および高層階区画を免除されるには、1時間耐火基準に適合する準耐火構造の床もしくは壁、特定防火設備で区画されていることが必要です。
規定の防火区画を設置しなかった場合のリスクは?
店舗において規定の防火区画を設置しなかった場合、以下のようなリスクがあります。
火災発生時に甚大な被害が出る
規定の防火区画を設置していない状態で火災が発生すれば、甚大な被害が出る可能性が高くなります。防火区画は、建物の内部で発生した火災の延焼をとどめ、被害の拡大を防ぐためのものです。にもかかわらず、きちんと設置していないとなれば、延焼による大規模火災や多数の死傷者の発生を予防することができません。
店舗において、いつ火災が発生するか予測することは不可能です。火を使う設備のない店舗であっても、顧客が何らかの理由により客席フロアで火を使う可能性もあるでしょう。また、漏電による火災や不審者による放火といったリスクもぬぐいきれません。
自分の店舗だけは大丈夫だろうと過信せず、規定に沿って正しく防火区画を設置することが大切です。
法律違反による罰則がある
建築基準法で決められた防火区画の設置基準を満たしていない場合、法律違反と見なされ、懲役3年以下もしくは罰金300万円以下が科せられることがあります。
店舗のオーナーや店舗の内装設計者は、防火区画の設置義務について熟知していることが大前提になります。店舗が防火区画の設置基準を満たしてなければ、意図的に違反したと捉えられることがあるので注意してください。
また、業務停止命令や営業許可取り消しなどの処分を受けるリスクもあります。
信頼できる設計会社に相談して進めることが大切
店舗の内装設計において防火区画を正しく設置するためには、信頼できる設計会社に相談して進めることが大切です。店舗の内装設計のプロとして、正しい専門知識と経験により、的確にアドバイスしてもらえます。
なお、単に設計費用が安いだけで設計会社を選ぶと失敗しやすいので気を付けてください。具体的には、店舗の内装設計の実績の豊富さや実際に手がけた実例をよく吟味して、顧客からの評判がよい制作会社を選ぶと間違いがありません。満足度の高い店舗に仕上げるためは、絶対に外せないポイントです。
まとめ
店舗の内装設計では、防火区画の正しい知識が必要不可欠といえます。万が一火災が発生した際に、延焼を抑えて被害の拡大を防ぐためにも、建築基準法で決まった基準をクリアすることが大切です。
防火区画についてよく分からない場合は、信頼できる設計会社に相談しながら進めていくと間違いありません。私たちサイファーデザインでは、店舗の内装設計を数多くご依頼いただいた実績がございます。まずは、何なりとお気軽にご相談ください。